大学4年の夏休み、移住を視野に南大隅へ!
「地域振興にとって、最も大事なのは『交流』だと思っています。これから暮らす南大隅町で、たくさんの人たちの思いや考え方を知れたのは、貴重な経験になりました。」そう笑顔で語るのは、高柳亮太郎(たかやなぎ・りょうたろう)さん。東京農業大学の4年生で、卒業後は南大隅町への移住を検討しています。

高柳さんは、農大のサークル活動の一環で、これまで南大隅町に5回訪れてきました。
移住について具体的に検討するとともに、鹿児島県で長年行われてきた「からいも交流」に関する卒論の調査のため、1ヶ月間の中長期滞在プログラム「すみっこ留学」に参加しました。農業を中心とした仕事を体験しながら、地域のイベントや行事に参加し、夏休みの1ヶ月を南大隅町で過ごしました。

「これまでの南大隅での滞在の中で、最も『生活』に向き合うことができました」と語る高柳さんの、すみっこ留学活動レポートをお届けします!
卒業後の移住を見据えて、自身の適性に向き合う!
高柳さんは、東京農業大学の4年生。
農学系の学科がとにかく豊富な農大ですが、高柳さんは「地域創成科学」を専攻しています。人口減少が進む社会において、各地域で培われてきた伝統や知恵に、自然科学・社会科学の最新の知見を掛け合わせることで、持続可能な地域づくりを実現するための学術分野です。
そんな高柳さんが4年間続けてきたのが、「アジア・アフリカ研究会」(通称AA研)でのサークル活動です。

AA研は、主に「青年海外協力隊」の農業分野への参加志望者が集まるサークルで、50年以上の歴史を誇ります。
「海外の農業の現場に飛び込む前に、『まずは身近な日本で農業を学ぼう』という趣旨で、毎年春休みに『農業実習』を目的とした合宿を実施しています。南大隅町での合宿は、2025年で30周年を迎えました。僕も2年生のときに、春の合宿で初めて南大隅を訪れたんです」と高柳さんは話します。



南大隅町で農業を営む「受け入れ農家」のもとで、約30年にわたって学生との交流を続けてきました。





年間を通して温暖で、地形の起伏に富んだ南大隅町は、年間を通して様々な作物を育てることができます。
ジャガイモ、バラ、スナップエンドウ、米、肉牛、ブロイラーなど、作目も農業のスタイルも多種多様!





そんな農家の方々が、家族のように学生たちを受け入れることで、南大隅町と農大生の関係性が続いてきました。

合宿活動を通して南大隅の魅力を味わった高柳さんは、合宿だけでなく個人実習も行い、これまでに5回にわたって南大隅町を訪れてきました。サークルを引退し卒業後の進路を考えるタイミングで、「南大隅町で暮らしてみたい」という気持ちと向き合い、移住に向けた一歩を踏み出すことに。
「具体的にやりたいことはまだ決まっていないのですが、自分の適性を見つけるためにも、まずは地域の仕事を体験してみたいと思ったんです」と、高柳さんは語ります。
農業以外の「仕事」の選択肢
こうして、8月上旬〜9月中旬にかけて、高柳さんの「すみっこ留学」がスタートしました。
すみっこ留学とは、「お試し住宅」に滞在しながら、農業を中心とした南大隅町の仕事を体験する、1ヶ月間の中長期滞在プログラムです。滞在期間中は、地域の行事やイベントの中で地元民と交流していただく「地域活動」も用意されており、実践的に移住を検討することができます。




「農作業では、バラ・ピーマン・肉牛など、様々な作物を経験させていただきました。自らも移住して60代から新規就農した杉野薫(すぎの・かおる)さんのもとでは、『やりたいことをやりたいだけやる』というスタンスについて伺い、移住を通して自分の得意分野を活かすためのイメージが湧いてきました。梅木農林機工での清掃作業では、丁寧さだけではなく速さまで求めるのが仕事の基本だと痛感しました。多くの仕事の現場を回って、実践的で踏み込んだ学びが得られたと思います」と、高柳さんは振り返ります。
これまでのAA研での合宿では、農業関係者のみを回ってきた高柳さん。
今回のすみっこ留学では、南大隅を代表する温泉宿泊施設「ネッピー館」や、地域の保育施設である「つじみ保育園」でも作業を経験しました。



「これまでの滞在での経験から、南大隅に来て仕事をするなら、やっぱり農業しかないのかな〜と思っていました。ですが今回の体験で、農業以外にも様々な仕事の選択肢があることを実感しました。保育園で子供と遊ぶのは特に楽しくて、作業が休みの日にも個人的に遊びに行ってしまうほどでした」と笑顔で振り返ります。
南大隅の「受け入れの土壌」の核心へ
また、すみっこ留学におけるもう一つの目的が、卒論の調査活動でした。テーマは、「からいも交流」の分析を通した、交流がもたらす地域へのインパクトについてです。
「からいも交流」とは、1981年に鹿児島県の大隅半島を中心に始まった、外国人留学生と農村部の国際交流活動です。南大隅町では1984年から受け入れが始まり、農村部に外国人留学生を受け入れて、2週間ほど滞在・交流するという取り組みを続けてきました。
「AA研の受け入れ農家の皆さんには、『からいも交流』の経験者の方がたくさんいらっしゃいます。AA研での合宿受け入れが30年以上続いているのは、からいも交流によってできた『受け入れの土壌』が大きな要因になっているんじゃないかと思うんです」と高柳さんは語ります。

今回の滞在期間中に、からいも交流に携わってきた8組の地域住民への聞き取り調査を実施しました。受け入れ農家のつながりを通して、からいも交流の取り組みを始めた加藤憲一(かとう・けんいち)氏にも会うことができたそうです。

「『お金が絡まないからこそ、交流を楽しんで続けることができた』というのは、多くの受け入れ農家が話していました。夫婦での受け入れに関する感覚の違いや、それぞれの経験者が語る留学生との思い出など、実際に話を聞くことができたからこそ見えてきた部分も多かったです。自分の考えだけに凝り固まることなく、伺った内容をもとに、多様な角度から『交流』の意義を分析していきたいです」と、高柳さんは意気込みます。
1か月過ごしてわかる「暮らしのイメージ」
すみっこ留学を通して、今後の南大隅での「暮らしのイメージ」が見えてきたと、高柳さんは語ります。
「参加する前は、これまでの合宿での関わりのように、毎晩のように地域の方々と飲み会をしたり、イベントに参加したりするのが当たり前だと思っていました。ですが、実際に1ヶ月間滞在してみると、思いのほか一人で過ごしながら自身と向き合う時間が多く、ずっと実家暮らしだった僕にとっては『これが生活か』と衝撃を受ける部分もありました。
始めは地域での仕事のイメージをつかみかねていましたが、おかげさまで農業以外の選択肢も見えてきました。4年間で続けてきた居酒屋でのサービス業の経験も活かしたりと、自分だけの暮らしのあり方を検討してみたいと思います。」



すみっこ留学は、人との出会いを通して、これまでにない自分と出会える場です。
自分自身が培ってきた「ものの見方」と、地域住民の「暮らしのあり方」が出会うことで、その地域だからこそ実現できる、新たな可能性が見えてきます。
高柳さん、1ヶ月間大変お疲れ様でした!
同じ南大隅町の住民として、春から共に歩んでいけるのを楽しみにしています。

文:大杉祐輔 画像提供:高柳亮太郎さん・受け入れ事業者の皆様



