県内では数少ない事例
2025年4月から「南大隅町移住コーディネーター」の任用が始まりました。
すみずみ!みなみおおすみには、今回任用された3名(梅木涼子・中川夏帆・大杉祐輔)の全員が所属しており、南大隅への移住・定住に関する総合サポーターとして業務に励んでいます。

「移住コーディネーター」の任用については、県内では今のところ鹿児島市と南大隅町にしか正式な事例はないそうです(2025年10月現在)。移住定住分野における、県内でも先進的な取り組みと言えるでしょう。

鹿児島県以外の都道府県に目を向けると、地域内のほとんどの市町村に設置されているところもあれば、全く設置されていない県もあります。移住コーディネーターについては、国によって具体的な定義や要綱が定められているわけでもないので、大まかな方向性は決まっているものの、市町村によって定義や業務内容がバラバラだったりするのです。
そこで本記事では、「南大隅町移住コーディネーター」のミッションや特色、日々の業務についてご紹介します。これを読めば、移住コーディネーターのやっていることがちょっとだけ明確になることと間違いなし!興味のある方はぜひご覧ください。
なぜ設置することになったのか?
南大隅町における「移住コーディネーター」とは、南大隅への移住・定住に関する総合サポーターです。地域で共に暮らす仲間を一人でも多く増やせるよう、すみずみ!みなみおおすみが行う移住定住促進に関する業務の担い手として動くのが、移住コーディネーターの仕事です。

2025年4月から移住コーディネーター制度がスタートしたわけですが、そもそも「すみずみ!みなみおおすみ」はどのように始まったのでしょうか。
すみずみ!の前身となる団体は、2017年に設立された「南大隅町ブロンズ就業支援協議会」です。
高齢者の職業斡旋を行う「シルバー人材センター」が設置されている自治体は多いことと思いますが、「ブロンズ」はシルバー未満の世代、つまり30〜50代ぐらいの地域住民をターゲットにした職業斡旋を目指して設立されました。2021年からは食品加工室も運用することになり、特産品開発や地域住民の起業支援なども視野に入れて活動していました。
そこから紆余曲折あり、2021年に石畑博が南大隅町長に就任し、2024年ごろからブロンズ就業支援協議会の方針を転換する案が出されました。そこで打ち出されたのが、現在のすみずみ!の主軸となる「移住定住促進」というミッションでした。

なぜこのような方針転換が決まったのでしょうか?
移住定住に関する取り組みは、全国どの自治体でも取り組んでいるものですが、その多くは県や市町村役場の担当課が行っています。ですが正直な話、役場職員は365日いつも忙しい!!
人口減少が進み職員の確保が難しい中、通常業務をいっぱいに抱えながら、追加でイレギュラーな移住相談に対応するわけです。
行政の担当職員の皆さんは精一杯尽力されていることと思いますが、日々の業務の中でいつでも迅速かつ丁寧な対応を求めるのには、どうしても限界があります。その結果、「移住についての問い合わせをしたものの、返信が返ってこない」という声も聞かれるようになってきます。
人口減少が進む地域では、喉から手が出るほど必要とされる移住者。こうした方々が離れていってしまうのでは、本末転倒です。

そんな危機感から生まれたのが、「移住定住関連の業務をワンストップで行う民間団体」という、現在のすみずみ!のコンセプトでした。行政と連携した民間団体として、役場との協議や情報提供のもと、移住定住に関する活動に、迅速かつ緻密に取り組みことが求められたのです。
2024年春から現在のメンバーでの運営が始まり、新体制が始まりました。2025年6月には社名を「南大隅町ブロンズ就業支援協議会」から「すみずみ!みなみおおすみ」に変更し、本格的に活動を行っています。当初の「30〜50代への職業斡旋」から「移住定住促進」へとミッションが変遷したため、社名がそのままなのも不都合だったわけです。

また、移住コーディネーターの設置と運営にあたっては、地方交付税の「特別交付税」という枠を賃金や活動費に充てることが総務省から認められています。これは地域おこし協力隊と同じようなシステムで、地方の財政を圧迫せずに、地域に合った移住定住事業に取り組むことができるのです。こうした部分も、南大隅町で移住コーディネーター制度を進めるポイントの一つになりました。
南大隅町式 移住コーディネーターのコンセプト
すみずみ!の行う移住定住関連業務の担い手として創設されたのが、「南大隅町移住コーディネーター」です。地域で長年にわたって活動してきたメンバーをコーディネーターとして任用し、日々やってくる移住相談に対して、迅速かつ丁寧に対応できるような体制を整えています。

移住コーディネーターの創設には自治体ごとの「設置要綱」が必要で、その内容は地域によって異なります。「南大隅町移住コーディネーター」の特徴は、全員が自らも移住を経験していること!
自身が移住者であるからこそ、この地域しかない!と強く感じる「地域に惚れる」体験、移住に関する実際の苦労、定着までにぶつかる壁など、一通り経験しています。地域に数年〜数十年暮らし、地域の風土や特性をある程度理解している人材だからこそ、移住者の皆様に適切なアドバイスやサポートを行うことができるのです。

すみずみ!では、移住に関する事務的な聞き取りだけでなく、移住検討者の皆さんが地域の方々とつながりを作り、地域の魅力を真に感じていただくことを大事にしています。これを実現するため、すみずみ!では「住民参加型」の移住定住促進をコンセプトにしています。
例えば、最近では新規就農の希望や、外国人の移住相談が増えています。地域に根ざして活動してきた移住コーディネーターのつながりを活かし、農家の方と直接話す機会の提供や、通訳としてお力添えいただいたりと、地域の方々の力をお借りしながら移住相談に対応しています。

地域住民である私たちが移住者に寄り添うことで、地域の培ってきた文化や風土と、移住者の新たなアイデア・挑戦が混じり合い、これからの地域のあり方が見えてくるのではないかと思います。
地域によっては移住コーディネーターを一般の仕事と同じように定義し、これまでの地域との関わりを問わずリクルートする自治体もあります。ですが、南大隅町では「地域に根ざして活動してきた実績と経験」を重視しています。同じ移住経験者として、移住検討者の目線に立ちながら、地域の方々とのつながりを元にしたサポートをすることが大事だと考えているのです。

ちなみに、総務省が掲げる移住コーディネーターには「専任」と「兼任」の2種類があります。専任は平日事務所に常駐、兼任は必要な時のみ出勤する形となっており、メンバーの希望や状況に合わせて選択できるようになっています。2025年10月現在、南大隅町では専任で2名、兼任で1名を任用しています。
こんなことをやってます!
では、具体的にはどんな業務を行っているのでしょうか?
すみずみ!みなみおおすみの業務は、大きく分けて2つあります。
移住につながる「移住の窓口」、定住につながる「地域の受け入れ環境づくり」です。
これに加えて、地域内外に向けた情報発信も、重要な分野となっています。

これらに総合的に取り組むのが、移住コーディネーターの具体的な仕事というわけです。
◆移住相談(物件・仕事探しのサポート、空き家バンク登録物件の案内など)



◆お試し住宅運営




◆移住体験プログラム(すみっこ留学)




◆空き家活用促進(空き家貸家意見交換会の開催 など)



◆移住フェアへの参加




◆地域交流企画の実施



◆地域住民と移住者の交流の場づくり



……以上、いかがでしたでしょうか?
移住コーディネーターは、移住者と地域を繋ぐハブ的な存在だと思います。
地域外からやってきた人は、はじめは地域の表層的な部分しかわかりません。地域の人についてや、地理的な特性、地域の慣習……。こうした理解に時間がかかる「ブラックボックス」的な部分に対して、地域に根ざした移住コーディネーターのサポートが入ることで、地域の魅力やリアルにアクセスしやすくなるのではないでしょうか。

地域と移住者の双方が活力あふれる暮らしを送ることができるよう、今後も全力で活動に取り組んでまいります。
移住や暮らしに関してお困りごとがありましたら、まずはお気軽にお声掛けください!
(文:大杉祐輔)



