一般社団法人 すみずみ!みなみおおすみ

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南大隅の人々【前編】


2025.10.22

30年暮らして感じる、南大隅の魅力とは?

20代の頃に、鹿児島県南大隅町に移り住んで30年になろうとしている。ここに暮らしてみて、この地域の良さを聞かれたらありきたりだが、いつも最後は「人」だと答える。

「人がいいってどんな風に?」「普通にどこでも言われてるよね」という声が聞こえてきそうである。だが、30年住んで、酸いも甘いも味わってきた私は、それでも「人」と答えている。

そこでこの場をお借りして、つらつらと南大隅の人々について書いてみようかと思う。独断と偏見でしかないが、これは私の南大隅町の人々へのラブレターかもしれない笑。興味がある方はどうぞお付き合いください。

好奇心が旺盛、オープンマインドとはこのことか!!

学生時代から私は海外含めていろんなところに行きました。行くといっても、旅というより農業実習が主な目的です。

「農業実習」というと当時はほぼ100%農家の方のところに住み込みでお世話になるのですが、これが今思えば、そこの地域性を比較的短い時間でもディープに、かつダイレクトに感じることが出来るかなり優秀なツールでありました。

そんな中で、南大隅町で一番感じてきたのが、人々の好奇心の旺盛さです。南大隅の人々は、初めましてのものに対しても何も怖じ気付くことなく、私からしたら「そこまで!?」と笑いが出てしまうくらい、ガンガン突き進んでいきます

興味関心の対象は、モノだけでなく、人に対しても同じです。「何だこれは??」と感じたら、一歩引いて遠くから様子を見るどころか、どんどん近づいていき、直接見聞きし、面白がってくれるのです。

基本姿勢として、裏がない見た目そのままのストレートな方が多く、屈託のない笑顔がまさにぴったりなオープンマインドを地でいく人々が多い、そんな南大隅町の人々は最高なのです。

ユーモアたっぷり

私は福岡出身なのですが、南大隅を訪れる前は同じ九州だからたいして変わらんだろうとタカをくくっておりました!それが何ということか、いちいち人の言うことが面白すぎるのです。

私が結婚して間もない頃、80歳になろうともするおじいさんが、会っていきなり「今日はわっぜさみぃどな!ニヤリ」。私は、「????」。だって、今は暑い日が続く夏の真っ盛りの8月、私は、このおじいさんはついに暑さにやられてしまったのか、はたまた鹿児島弁は暑いことをさみぃというのか、そもそもこのおじいさんはヤバい人なのではないか、など一瞬でいろんなことがよぎり、何も答えられず頭が真っ白になってしまいました。

そんな私をよこ目に、夫がひとこと、「じゃらいねぇ、凍えて死にそうやらい」と笑って答えていました。なんだこれは!!!!

「今日は暑いですねぇ」と、ただの天気の挨拶なはずなのに、わざわざ逆のことを言って人を笑わせてから、用件に入る日常が南大隅には広がっているのです。それも都市部ではいわゆる高齢者と言われるおじいさんおばあさんたちが率先してのこの風景。

常に頭を回転させ、どこからが本当でどこまでが冗談かを見分ける力も養われる、そんな南大隅町の人々は最高なのです。

どこもかしこも夫婦漫才

南大隅町には、今でも多くの学生さんが訪れます。ここの好きなところは何?と聞くと、2~3年に一回くらいの割合で、「鹿児島に来て初めて家族っていいな、と思えました!」と答えてくれる学生がいます。実は、私もその一人でした。

前で触れたユーモアあふれる人たちにも通じるのですが、とにかくお父さんとお母さんが仲がいい

私が実習中でお客さんだから、一時的にお客の前では仲良く振舞っているのだろう、最初だけだろうと思っていたのですが、それが10日経っても20日経っても一向に変わらないのです。自然体。農家のお父さんとお母さんは、ご飯の時も一緒、仕事も一緒。冗談が過ぎるお父さんのボケに、絶妙なツッコミをいれるお母さん達の夫婦漫才がいつの間にかはじまり、爆笑の渦が巻き起こります。

当時学生だった私は、「なんでそんなに仲良くいられるんですか?」と聞いてみたことがありました。返ってきた答えは、「ケンカしていたら、仕事にならんでしょ。」

農業という仕事は一人ではできない。カゴを一緒に持ったり、ヒモの端と端をどうしても二人で持たなきゃいけない時がある。ケンカしてるヒマがないのよ。という答え。毎日毎日ずっと一緒にいるからこそ、対立し合うのではなく楽しく暮らす。そんな風にさらっと答えられる家族が一軒どころか、南大隅町には何軒もいらっしゃるのです。

家族で協力し合って生きていく、そのためには常日頃から楽しくしお互いに感謝する、という自然体の家族の姿がある、そんな南大隅の人々は最高なのです。

まだまだ南大隅の人々の魅力は尽きないのですが、今回はこのあたりで終わりにしたいと思います。続きが気になる方もそうでない方も、そのうち後編も書いてみるので気長に待っていてくださればと思います。では、このへんで。

(文:梅木涼子)